アカウントの安全

最小権限とは

最小権限は、人やツールに、その仕事に必要なだけの権限を与え、それ以上は与えないという考え方です。間違いや乗っ取りが起きたときの被害を小さくし、だれが何をできるかを分かりやすく保てます。

この記事でわかること

  • 最小権限がどんな考え方かを説明できる
  • ロールで権限を分ける仕組みと、小さなチームで役立つ場面がわかる
  • メンバーの見直しや、API キー・連携・AI のツールの権限の絞り方を知る
目次
  1. 最小権限とは、どんな考え方なのか
  2. 小さなチームで、なぜ大切なのか
  3. ロールとは何か
  4. ふだんの運用で、何をすればよいのか
  5. メンバーを定期的に見直す
  6. 抜けた人の権限は、すぐに外す
  7. 管理者の権限は、使う人と場面を絞る
  8. API キーや連携は、用途ごとに絞る
  9. AI のツールにも当てはまるのか
  10. まとめ
  11. mukumo では、メンバーごとにできることを分けられますか
  12. よくある質問

最小権限は、人やツールに、その仕事に必要なだけの権限(できること・見られる範囲)を与え、それ以上は与えないという考え方です。英語では principle of least privilege と呼ばれ、情報セキュリティの基本の原則の一つです。

たとえば、教室のアルバイトのスタッフに、教室の鍵は渡しても、事務所の金庫の鍵までは渡しません。Web のサービスでも同じで、申し込みを見て返信するだけの人に、請求の設定やメンバーの削除までできる権限は要りません。権限を絞っておくと、間違いやアカウントの乗っ取りが起きたときに、被害の届く範囲が小さくなります。

  1. 仕事を書き出す「申し込みを見て返信する」
  2. 必要な権限を選ぶ見るだけか、編集もするか
  3. ロールで渡す閲覧者・編集者・管理者など
  4. 定期的に見直す要らなくなった権限を外す
図仕事に必要な権限を選んでロールで渡し、定期的に見直して要らなくなった権限を外す流れ

最小権限とは、どんな考え方なのか

米国の NIST(国立標準技術研究所)は、最小権限を「利用者や、利用者に代わって動くプロセスのアクセス権限を、割り当てられた仕事に必要な最小限に制限する」原則と説明しています(NIST の用語集)。人だけでなく、連携したアプリや AI のツールのように、人に代わって動く仕組みにも、同じ考え方が当てはまります。

日本の IPA(情報処理推進機構)の「組織における内部不正防止ガイドライン」は、重要な情報へのアクセスについて、次の 3 つを必要最小限にするよう勧めています。

絞るもの 意味 例
人 権限を持つ人を、必要な人だけにする 受講生の名簿を見られるのは、講師と事務の担当だけ
権限 持たせる権限を、仕事に要るものだけにする 名簿は見られるが、書き出しや削除はできない
期間 権限を持つ期間を、要る時期だけにする 繁忙期だけ手伝う人には、その期間だけ渡す

小さなチームで、なぜ大切なのか

人数が少ないと、「全員が何でもできる」設定にしがちです。手間はかかりませんが、次のような場面で困ります。

  • 間違い: 編集だけのつもりの人が、設定を変えたりデータを消したりしてしまう。できることが少なければ、間違えられることも少なくなります。
  • 抜けた人: 辞めた人や、仕事を終えた外の協力者のアカウントが残っていると、あとから入られるおそれがあります。IPA のガイドラインは、異動や退職で要らなくなった ID とアクセス権を、ただちに消すよう求めています。
  • 共有のアカウント: 1 つのアカウントを何人かで使うと、だれが何をしたかが分からなくなります。1 人が抜けるたびに、パスワードを変える必要も出てきます。
  • 乗っ取り: フィッシングなどでアカウントを乗っ取られても、相手ができるのは、そのアカウントに許された操作だけです。管理者のアカウントが乗っ取られると、被害は組織全体に広がります。

ロールとは何か

ロール(役割)は、よく使う権限の組み合わせに名前を付けたものです。一人ずつ権限を細かく選ぶ代わりに、「閲覧者」「編集者」「管理者」のようなロールを人に割り当てます。この仕組みは、ロールベースのアクセス制御(RBAC)と呼ばれます。

多くの仕事のサービスには、次のようなロールがあります。名前と中身はサービスごとにちがうので、それぞれの説明で確かめます。

よくあるロール できることの例 向いている人
閲覧者 データを見るだけ 数字を確かめる人、相談に乗ってもらう人
編集者・メンバー データを作る・直す ふだんの作業をする人
管理者 メンバーの招待、ロールの変更、請求、連携の設定 組織の運営を担う人
オーナー 管理者の権限に加え、組織の削除など 事業の責任者

ロールを使うと、人が増えても一人ずつ設定する手間が減り、仕事が変わったときはロールを付け替えるだけで済みます。ちょうどよいロールがないときは、広すぎるロールより、狭いほうから始めて足すほうが安全です。

大事な操作では、1 人に全部を任せない「職務の分離」という考え方もあります。たとえば、請求書を作る人と支払いを承認する人を分けると、1 人の間違いや不正が、そのまま通りにくくなります。

ふだんの運用で、何をすればよいのか

メンバーを定期的に見直す

権限は、一度決めたら終わりではありません。仕事や体制が変わると、必要な権限も変わります。時期を決めて、メンバーの一覧とロールを見て、「この人に、この権限はまだ要るか」を確かめます。たとえば、オンライン講座の開講前だけ手伝ってもらった人に、管理者のロールが残っていないかを見ます。IPA のガイドラインは人事異動の時期にまとめて見直す例を挙げ、NIST も、割り当てた権限を定期的に見直して、要らないものを外すよう求めています。

抜けた人の権限は、すぐに外す

辞めた人や、契約が終わった協力者のアカウントは、早めに外します。人が抜けるときの手続きの中に「アカウントと権限を外す」を入れておくと、忘れにくくなります。共有のパスワードを知っていた人が抜けたときは、そのパスワードも変えます。

管理者の権限は、使う人と場面を絞る

管理者の権限は、それが要る人だけに渡します。大きな権限を持つアカウントほど、乗っ取られたときの影響も大きいので、ほかの人と共有せず、パスキーや二段階認証で守ります。パソコンでも、ふだんは管理者ではない標準のユーザーで使い、ソフトを入れるときだけ管理者の権限を使う、という分け方ができます。

API キーや連携は、用途ごとに絞る

ツールどうしをつなぐ API キーや連携にも、権限があります。

  • 読むだけで足りるなら、読み取りだけの権限にする
  • 用途ごとに別の API キーを作り、使わなくなったら失効させる
  • 連携のときに出る「許可する範囲」の画面を読み、仕事に要らない範囲が入っていないか確かめる

API キーの扱いは「API とは」、連携のときの許可の仕組みは「OAuth とは」で説明しています。

AI のツールにも当てはまるのか

当てはまります。AI のツールに、メールを送る、データを書き換える、といった道具を使わせるときは、人と同じように権限を絞ります。

  • 読むだけの作業には、読むだけの権限を渡す
  • 使う人自身の権限を超えさせない(その人ができない操作は、AI に頼んでもできないようにする)
  • 取り消せない操作の前には、人が中身を見て承認する

AI のツールに必要以上の権限を持たせると、AI の判断の誤りや、AI が読んだ文章に紛れ込んだ指示(プロンプトインジェクション)が、思わぬ操作につながりかねません。くわしくは「AI エージェントとは」で説明しています。

まとめ

  • 最小権限は、人やツールに、仕事に必要なだけの権限を、必要な期間だけ渡す考え方です。
  • 小さなチームでも、間違い、抜けた人のアカウント、共有のアカウント、乗っ取りによる被害を小さくできます。
  • ロールを使うと、権限を分かりやすく割り当て、仕事が変わったときに付け替えられます。
  • メンバーの定期的な見直し、抜けた人の権限をすぐ外すこと、API キー・連携・AI のツールの権限を絞ることを、習慣にします。

mukumo では、メンバーごとにできることを分けられますか

mukumo(ムクモ)では、設定の「メンバー」からメールで人を組織に招待し、そのときにロールを選びます。ロールにはオーナー・管理者・メンバー・閲覧のみがあり、閲覧のみの人はデータを見るだけ、メンバーはサイトやキーワードなどを編集できます。招待とロールの変更、プランと請求、監査ログ、API キーと連携は、オーナーと管理者だけが扱えます。自分のロールは、だれも変えられません。

メンバーを削除すると、その人は組織に入れなくなります。AI アシスタントの muku(ムク)に頼んでも、自分のロールでできない操作はできません。

いま使えるメンバーとロール

よくある質問

最小権限にすると、仕事が止まりやすくなりませんか

権限が足りずに仕事ができないのも困ります。仕事に合わせて権限を決め、足りないときは理由を聞いて足し、一時的に要る権限は期間を区切って渡すと、安全さと進めやすさを両立しやすくなります。

1 人で事業をしている場合も、関係がありますか

あります。制作会社や税理士など外の協力者に渡すアクセス、連携したアプリ、API キー、AI のツールに渡す権限は、1 人で仕事をしていても増えていきます。何に、どこまで許可しているかを、ときどき確かめましょう。

辞めた人のアカウントは、削除と停止のどちらがよいですか

サービスによっては、アカウントを削除すると、その人が何をしたかの記録まで消えることがあります。そのような場合は、まず停止してログインできないようにし、記録を残す方法があります。IPA のガイドラインも、この点に触れています。

管理者を 1 人だけにしておけば、いちばん安全ですか

そうとは限りません。管理者が 1 人だけだと、その人が休んだり、アカウントに入れなくなったりしたときに、だれも設定を変えられなくなります。管理者は必要な人だけにしつつ、1 人だけにはしないほうが安心です。

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